大阪地方裁判所 平成元年(わ)753号 判決 1989年8月18日
本籍
奈良県大和郡山市城町一四六七番地
住居
大阪市浪速区恵美須東二丁目三番一九号
会社役員
澤井勝
昭和一九年八月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官藤村輝子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪市浪速区恵美須東二丁目四番三号ほか三か所において、「やまと屋」等の屋号で大衆酒場を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和五九年分の実際総所得金額が四六八七万七三〇一円あった(別紙(一)修正貸借対照表参照)のにかかわらず、売上の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六〇年三月一一日、同区難波中三丁目一三番九号所在の所轄浪速税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が三一五万七五七一円で、これに対する所得税額が二一万二一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二一八五万三九〇〇円と右申告税額との差額二一六四万一八〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた
第二 昭和六〇年分の実際総所得金額が四九〇七万六二八七円あった(別紙(二)修正貸借対照表参照)のにかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六一年三月一四日、前記浪速税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が四七九万四九二二円で、これに対する所得税額が五〇万四六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二三一四万八一〇〇円と右申告税額との差額二二六四万三五〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた
第三 昭和六一年分の実際総所得金額が四七九一万九三五一円あった(別紙(三)修正貸借対照表参照)のにかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六二年三月四日、前記浪速税務署において同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が二二七万五三七九円で、これに対する所得税額が九万八五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二二四四万二五〇〇円と右申告税額との差額二二三四万四〇〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目)
(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書一一通
一 収税官吏の被告人に対する質問てん末書一四通
一 被告人作成の確認書二通
一 澤井和代及び澤井稔の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏の澤井和代(一一通)、澤井稔(五通)、大野康夫(二通)、松本忠、三浦純邇、山下重威(二通)、三宅久、夕田雅代、辻本和央、岡地孝史、清水実男、門西正二及び福島實に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(8ないし10、12ないし15、17ないし40、42ないし50)、調査報告書(51)及び写真撮影てん末書(三通)
一 国税査察官作成の査察官調査報告書二通(16、55)
一 浪速税務署長作成の源泉所得税の納付状況照会に対する回答書
一 上野力、九里修及び松野一雄各作成の回答書
判示第一の事実につき
一 浪速税務署長作成の証明書(4、5)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(1)
一 収税官吏作成の査察官調査書(41)
一 末吉則雄作成の回答書
判示第二、第三の事実につき
一 収税官吏作成の査察官調査書(11)
一 中井国夫作成の回答書
判示第二の事実につき
一 浪速税務署長作成の証明書(6)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(2)
判示第三の事実につき
一 浪速税務署長作成の証明書(7)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(3)
一 収税官吏の大門和雄に対する質問てん末書
一 奥田梅吉、後藤作夫、坂本寿章及び沢野康雄各作成の回答書
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上の各罪は同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については刑法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 三好幹夫)
別紙(一)
修正貸借対照表
澤井勝
昭和59年12月31日
<省略>
別紙(二)
修正貸借対照表
澤井勝
昭和60年12月31日
<省略>
別紙(三)
修正貸借対照表
澤井勝
昭和61年12月31日
<省略>
別紙(四)
税額計算書
澤井勝
<省略>